結婚式での我が父のスピーチは今でも忘れられません。数々の私の至らない点を父は挙げ、「この席で言いましたので、これらの点を理由とする離婚はなりませんゾ」と締めくくったとき、式場は大爆笑。逆説的なスピーチの中に、私は父親の愛情をじんと感じました。もちろん至らない点のひとつは、「料理下手」ということでした。結婚に当たっての私の最大の不安は何を食べていくかということ。その不安を見抜いた母親が私にしてくれたプレゼントは、新聞の料理記事を季節別にスクラップブックに整理して贈ってくれたことでした。
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もう三十年も前のことですから、今時のようなカラフルで立派な料理書は少なく、あっても値が張って手が出ませんでしたから。通勤の時間、私は座っていても立っていても、そのスクラップブックを読んでいました。頭の中で繰り返し調理しました。もうひとつの母のプレゼントは、母の使い慣れたフライパンでした。母が「フライパンだけは、油のなじんだものでないと」と言い、自分は新しいものを買い、私に古いものをくれました。新しい生活の中での古い道具は安心感を生んでくれました。そのフライパンは今も使っています。今は亡き母が、私の結婚生活が幸せであることを願ってくれていたことを、今もしみじみ思うのです。